その四 「確固たる証拠は思いあがり」

Last Updated on 2025年2月15日 by 成田滋

教育や心理の実験で使う「エビデンス」について考える。定義にあるように、エビデンスとは「性質や行為を明示する形跡」と規定するのが妥当である。なぜならば、証拠として必要にして十分な条件で得られたものとして立証することは困難だからである。心理検査の標準化で使うように、内的・外的妥当性をエビデンスは満たしているかを考えなければ、説得力がない。「これこれの条件下でこのような結果が出た」という場合は、観察された資料をデータとしてとらえ、それをエビデンスという用語で置き換えているに過ぎない。

 エビデンスの定義に戻り、その定義の一つ、「手本とか例」を思い起こして欲しい。データというのは、内的にも外的にも揺るがない証拠などと考えるのは思い上がりであり、パソコンの成りすましに似た証拠の妥当性を誤認する行為といわなければならない。

 少なくとも、「かれこれしかじかの条件を設定し、変数を制御し、誤差を分散した結果はこうなった」と説明する謙虚さが必要なのである。エビデンスを確固たる証拠である、といった取り違えた結論を下してはならない。